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旺盛な好奇心と行動力で、伝統工芸に新しい風を吹き込む

interview_05_samune1彫刻師

今井 宏明さん

 

砺波市に隣接する南砺市井波は、
井波彫刻で知られるまち。

今井宏明さんは、

親方のもとで5年間の下積みを経た後、
独立して彫刻師になりました。

 

今は砺波市の自宅兼工房で仕事をしています。

 

会社員から、彫刻師へ

約250年の歴史を持つ「井波彫刻」。200本以上のノミや彫刻刀を使って仕上げるその技法は国の伝統的工芸品に指定され、南砺市井波は彫刻技術者200人を超える木彫刻産地として全国に知られています。
「名古屋のデザイン会社に勤め、チームでものづくりをしていましたが、25歳の時に「最初から最後まで自分1人でものを作ってみたい。手に職を付けたい」と強く思うようになりました。そんな時、井波には井波彫刻のための最高の技術と環境が整っているということを知り、手に職をつけるなら井波彫刻だと思ったんです」。
すぐに会社を辞め、親方を探すために井波へ。その行動力には驚かされます。
「片っ端から工房をめぐって親方探しをしました。親方に出会えたのは、これが最後と井波を訪れたとき。ある方から「古川鎮雄さんのところに行ってみなさい」と言われて行ったら、親方がちょうど弟子を探していたときだったので僕を引き取ってくれたんです。親方の家に住み込んで下積み生活を始めました」。
入門と同時に、全国唯一、木彫刻だけを学べる「井波木彫刻工芸高等職業訓練校」に入学。以後、親方のもとで5年間働いた後、彫刻師として独り立ちしました。
「今から思えば、僕の父は工務店勤めで、家には木材や道具がありました。小さい頃から、そういうものにふれていたことも、今の道を選んだことに影響しているのかもしれませんね」。

 


住宅兼工房で、彫り続ける日々

interview_05_003彫刻師歴6年、今井さんの住居兼工房は砺波にあります。
「今の住居兼工房は、かつて建設会社の社員寮として使われていました。工房の床は、もともと畳でしたが、フローリングに張り替えたんです。古くても自由にできる家を望んでいたので、希望にピッタリ。以来、お借りしています。家賃は毎月1万円と安いのですが、古い建物なので、外壁や換気扇の設置など細かいところを少しずつリフォームしながら暮らしています」。
その工房で作務衣を身に纏い、仏像を彫る今井さん。その仕事は多岐に渡ります。
「仕事では、天神様をはじめ、仏像、表札、小物入れ、ipadケースなどいろいろなものを作っています。今度はお釈迦様を彫ります。どの仕事も気は抜けませんが、仏像のように顔があると緊張感がより増します。作品を完成させるには、塗師の方や木材屋さん、建具屋さんなど地元の職人さんの力が必要。そのような職人さんが揃っていた場所が、砺波だったんです」。

伝統を大切にしながら、自身の経験を生かして新しい作品づくりにもチャレンジしている今井さん。2013年には、クラフトコンペにユニークなデザインの椅子を出品し、見事入選を果たしました。

 


彫刻師だけにとらわれない生き方

2013年には、友人からの誘いで、砺波市の青年サークル「となみ元気道場」に加入。となみ元気道場では、砺波と南砺の両市境にある閑乗寺公園で、夕陽と散居村を眺めて寛ぐイベント「CHILL OUT IN KANJOJI」を開催するなど、砺波市を元気にする企画の数々を実施しています。
「となみ元気道場のメンバーになったことで付き合いが広がり、友人が増えました。町内の青年部との付き合いも生まれ、地元の行事にも参加しています。庄川観光祭では夜高行燈(よたかあんどん ※注1)を作るために、砺波や津沢など周辺の夜高を全部見ました。製作期間中は、日中から公民館に行って作っていましたね。1年のうち、半分が行事を占めているような状態ですが、そのつながりで獅子頭の新調や修理を依頼されるなど、仕事にも活かされています。2016年の春と秋の祭礼では、私の作った獅子舞が町内で舞いました」。
仕事、ボランティア活動、行事と多忙な今井さん。実は、イベントなどで曲をかけるDJという顔も持っています。
「DJは、会社員時代に始めました。閑乗寺公園のイベントでDJをしていた時、富山で活躍しているDJの方々と出会ったのがきっかけで、富山を拠点に活動している「みんなのロックDJナイト」というグループに入りました。今は、富山市にあるクラブ「MAIRO」でDJをしています。この活動もずっと続けていきたいですね」。
 
(※注1)「夜高行燈」とは、木材や和紙で出来た美しい行燈山車のこと。

 


砺波への移住をお考えの方へ。今井さんが思う、砺波の魅力。

interview_05_005最後に、今井さんに砺波や仕事への思いを語ってもらいました。
「彫刻は、自分の仕事だけでは完成しない部分があります。もともとは1人ですべてを完結させたいと思って彫刻師を目指しましたが、実際は周囲の人たちの力を得られないと何も生み出せません。ここには、材料屋さん、建具屋さん、漆塗りの職人さん、桐箱屋さんが集まっていて総合的に環境が整っています。また、自然が豊かで時間の流れもゆったりと感じられ、人がのびのびと暮らしているところがいいなと思います。これからもずっと砺波で人生を謳歌していきたいですね」。
砺波は、今井さんにとって、生活の場としても仕事の場としても、優れた環境のようです。また、「自然が厳しいからか、みんな体が強いなと思います。弟子の中には、冬や梅雨に体調を崩して少しの間だけ実家に帰る人もいますが、砺波の人は暑さにも寒さにも梅雨にも強いですね。なので、どこに行っても適応できると思います」と他県出身ならではのユニークな感想も。これは砺波人がなかなか気付けない魅力のひとつかもしれません。

 

 

プロフィール

今井宏明(いまい・ひろあき)
1980年、京都府京丹後市出身。高校卒業後、京都市のデザイン専門学校へ進学し、2年後に名古屋のデザイン会社に就職。会社では、ディスプレイなどのパースデザインを担当するも、25歳の時に井波彫刻に惹かれて退社。井波彫刻師・古川鎮雄氏に入門し、5年間の下積みを経て独立する。現在、砺波市に工房を構え、彫刻師として活躍中。

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